旅する情報系大学院生

旅と留学とプログラミング

オンライン大学院に飽き飽きしている話

去年の8月に渡米してから早一年弱が経ちました。

ブログもほぼ一年ぶりの更新となってしまいました。なかなか記事を書く気が起こらなかった理由は、授業も研究もずっとオンラインで大学に行けず、全くMITの学生として経験を積めていると思えず、また特筆して記事を更新する内容も無かったからです。

そんな中ですが、ありがたいことに状況は日々良くなっています。アメリカでは既にワクチンが行き渡り、マサチューセッツ州では7割の人がワクチン接種済みです。5月29日にはCity of Cambridgeのコロナ関係の制限が全て撤回され、MITでも室内でマスクなしで複数人が集まれるようになりました。秋からは対面授業も再開すると発表されており、同期と集まれるようになる日を今か今かと待ち侘びています。

今回の記事では、ここ一年のリモートワーク関係の生活面を振り返りたいと思います。

時差が辛すぎた日本からのリモートワーク

2020年の6月から渡米してMITでPhDを始める予定でしたが、ビザが取れず入学が9月に延期になりました。渡米するまでの間、指導教員と相談して日本から研究を進めようという話になりました。

その時は実家に住んでいたのですが、他の日本時間で生きている家族と、ほぼ昼夜逆転にならざるを得ない私の生活リズムが決定的に合いませんでした。週に3日、ミーティングのために朝6,7時に起きては同じ部屋で寝ている夫のいびきが聞こえないようにミュートを繰り返し、また両親や弟が朝の支度で音を出すので静かにしてくれと頼んだり、不必要なストレスが沢山溜まりました。

研究も思うように進まず、日本からアメリカ東海岸とリモートワークする辛さを体感し、コロナが収束していなくても絶対に8月に渡米するぞという決意が固まりました。

孫正義育英財団の寮生活

2020年8月に渡米してから、2021年1月に引っ越すまでは私が所属する孫正義育英財団という奨学金のボストン寮にお世話になっていました。寮といっても普通の家で、家賃や光熱費は財団が持ってくれるので出費の必要がありません。本当に懐が深くサポートが手厚い財団だと思います。

7月に新入生にはビザを下ろさないという決定がアメリカ政府から出され、MITやHarvardを中心とした大学の訴訟によってその決定は撤回されましたが、「フルでオンラインの大学の新入生は渡米できない」という方針は続きました。従って、7,8月はアメリカの大学の新入生はみな自分の大学がオンラインになるのではないかとパニックを起こしていて、私もその一人でした。私の学科は幸いにもハイブリッドにするという決定を下したので私は渡米できましたが、同期の知り合いの中には航空券もアパートも確保していたのに渡米一週間前になって大学がオンラインになり渡米できなくなり、全てをキャンセルせざるを得ないという人も沢山いました。

そんな直前まで家探しができない状況の中、財団の寮に滑り込めたのは幸運でした。

寮生活は楽しかったですが、一時的にしか住まないと思って家具などをほとんど買わなかったので不便さが募り、またプライバシーがない環境だったので一人暮らしをすることにしました。

はじめての一人暮らし、そして猫を飼う

2021年の1月から念願の一人暮らしをCentralという駅の近くではじめました。財団の寮はMITからかなり遠く、自転車で30分ほどかかりましたが、このアパートはスーパーにもMITにもレストランにも近く、立地が完璧なので気に入っています。

1月はMITの冬休みで授業がなく、多くの時間を家具を買ったり組み立てたりするのに費やしました。自分で家具を買う経験も初めてだったので、予算と相談しながら機能性が高く統一感のある家具を選ぶのは楽しかったです。

2月には家具もほぼ揃い、生活に飽きてきたので猫の里親になることにしました。ペットセンターに付随している保護猫シェルターに行き、当時9ヶ月くらいと言われていた子猫をお迎えし、くらげと名付けました。くらげはシェルターにいた時はあまり人に懐かず、それが原因で他の兄弟がもらわれていく中シェルターに残ってしまっていた可哀想な猫でした。今では私の足元にまとわりついて離れない、とても懐いている猫になっています。

3月には新しいアパートにも猫にも慣れ、授業と研究のストレスから逃れる場所がない状況に嫌気がさしてきました。特にそれ以降変化はなく、今に至ります。

オンライン大学院は本当にキツい

日本にいて時差で苦労していた時よりはマシなものの、新しい国に移住して一年弱経つのに大学に行けず、大学や現地の友達もほぼ作れないという状況はかなりキツいものがあります。楽しみはないにも関わらず授業も研究プロジェクトも待ってくれないので、とっくに尽きているモチベーションの井戸の底を引っ掻きつつ1日1日を乗り切っているような状況です。鬱病なのかどうかは医者に行ってないので分かりませんが、私の人生でもっとも鬱病に近い状態であることは間違いないように思います。

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桶の板が一枚でも足りないと水が入らないのと同様に、こんなに楽しみがない状況で慢性的に鬱病のような状態が長期間続くと、何に対してもやる気を起こすのが難しく感じています。

この経験の中で一つ確実に分かったことがあるとするなら、私は将来的にもリモートワークに絶対に向いていない人間だということです。フルタイムのインターンや仕事を見つける前に分かったのはある意味良かったかもしれません。

おわりに

アメリカの大学院に出願する前の2019年9月にMITを訪問した時のことを思い出します。名前を知っていた有名な教授と何人も廊下ですれ違い、SIGGRAPHというトップカンファレンスのスピーカールームで知り合いになった南京大学の学生がMITのPhDに進学していてコモンルームでコーヒーを飲んでいて、話しかけたら私のことを覚えていてくれました。コンピュータサイエンスの建物では大勢の学生が行き交い、エネルギーに満ち溢れている雰囲気を建物全体から感じ、こんな環境で勉強できたらどんなに楽しいかと強い憧れを感じました。

今では私もMITの学生になり、コンピュータサイエンスの建物に自由に入れるようになりました。しかし、廊下にもオフィスにも誰もおらずゴーストタウンのような雰囲気になっており、私が憧れたあのエネルギッシュな雰囲気は見る影もありません。

自分でこの状況を解決できる方法があるならとっくにやっているのに、時間が経つのを待つしかないというのが無力感を増しているのだと思います。

大学生や大学院生で同じような状況にいる方は多いと思います。パンデミックばかりは我々の力ではどうにもなりません。時間が経つのをひたすら待ち、日々小さな楽しみを見つけるしかできることがないと思います。

乗り切りましょう。